第30回 NHKマイルカップ 出走馬評価
マジックサンズ(牡3、武豊) – 須貝尚介厩舎
1. 血統情報: 父キズナ、母コナブリュワーズ(母父キングカメハメハ)。半姉に札幌2歳S勝ち馬アルマヴェローチェ(須貝厩舎同門)がいる良血。
2. これまでのレース内容: 昨夏の札幌2歳Sを制して重賞初勝利。続くホープフルS(GⅠ)は2番人気に推されるも16着と惨敗し骨折も判明。休養明け直行の皐月賞(GⅠ)では終いの脚33秒8(出走メンバー最速)で6着まで追い上げ、復調と底力を示した。キャリア4戦2勝で、重賞勝ちの実績とクラシックでの健闘が光る。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):武豊騎手を背に僚馬アルテヴェローチェ(強め)を0.9秒先行し、6F82.7-66.6-51.4-36.3-11.0(馬なり)で同入。初めて跨った武豊騎手は「いい馬。皐月賞を使ったばかりでこれだけ動けるのは体調がいい証拠。距離も合いそうで楽しみ」と好感触。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):酒井騎手が騎乗し、4F53.8-39.4-25.6-12.7(馬なり)をマーク。須貝調教師は「前走(皐月賞)と同じくらいの時計で、リラックスして走れていた。前走並みの脚を使えることを確認できた。東京マイルでもいい競馬ができると思うし、武豊騎手なので一発を期待している」と仕上がりに満足。1週前にしっかり負荷をかけ、最終は同じ調整パターンで状態キープ。評価は S(絶好調)と見られる。
4. コース相性・展開適性: 左回りのマイル戦は初挑戦だが、父キズナ譲りの瞬発力と、皐月賞で見せた鋭い追い込みは直線長い東京コース向き。折り合いもつきやすく、マイルの流れにも対応可能。速い上がり勝負になれば持ち味の末脚が活きる。一方で高速決着(1分32秒台前後)への適性が鍵だが、CWで見せる動きの良さからも対応力はありそう。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は、GⅠ皐月賞でメンバー中最速の末脚を発揮した底力と、中2週ながら調教で疲れを感じさせない好気配。さらに武豊騎手への乗り替わりも大きな強み。課題は、初のマイル戦でペースへの対応と、皐月賞からの短い間隔による上積みがどこまで見込めるか。ただ調教師は「前走後にスイッチが入って良くなっている」と手応えを掴んでおり、状態面の不安は小さい。
6. 調教師の該当コース成績: 須貝尚介調教師はクラシックや長距離GⅠでの実績豊富だが、NHKマイルC)はこれまで未勝利も東京マイルはソダシでヴィクトリアマイル勝利。ただ昨年も2頭出しで挑戦しており、コース適性を踏まえた調整を施すなど、東京マイルへの備えは万全。今回は厩舎悲願のNHKマイルC初制覇を狙う。
7. 騎手の該当コース成績: 鞍上の武豊騎手は東京芝1600mの重賞を多数制覇してきたレジェンドで、NHKマイルCもシーキングザパール、クロフネ、ロジックなど3勝の実績あり。年齢を重ねても勝負勘は健在で、近年も東京マイルGⅠ(安田記念など)で上位争いに絡む。経験値とコース巧者ぶりはメンバー随一であり、大舞台での信頼性は高い。
8. 結論: 調教の動き・気配とも申し分なく、皐月賞で示した末脚はメンバー中でも際立つ存在。初のマイルでも折り合い不安がなく、スピード決着にも対応可能と見られる。武豊騎手という心強いパートナーを得て臨む今回は、距離短縮が好転材料となり一発逆転のチャンス十分。上位争い必至の有力馬に推せる。
アドマイヤズーム(牡3、川田将雅) – 友道康夫厩舎
1. 血統情報: 父モーリス、母ダイワズーム(母父ハーツクライ)。祖母フォルナリーナは重賞3着の実績馬で、近親に皐月賞馬ジェニュインを持つ。マイル~中距離で切れ味を発揮する良血。
2. これまでのレース内容: 昨年末の朝日杯フューチュリティSで2馬身半差の完勝を収めた2歳王者。3歳初戦のNZT(GⅡ)は1番人気に推され、勝ち馬イミグラントソングと同タイムの2着惜敗(ハナ差)。デビューから無敗の2連勝でGⅠ制覇を果たし、前走は勝ち切れなかったものの内容は悪くなく巻き返しが期待される。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(5/1、栗東CW、良):荻野極騎手が騎乗し、7F96.8-65.9-51.3-36.2-10.7(強め)をマーク。併せたレッドイステル(一杯)を0.9秒追走し0.6秒先着。友道調教師は「道中折り合い良く、反応も上々でいい1週前追い切り。前走は軽めの調整だったが、今回は1週前からジョッキーを乗せてスイッチを入れた。いい感じでG1に行ける」とコメント。叩き2戦目で状態をしっかり上向かせた。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路・重):助手騎乗で4F52.9-37.8-24.3-12.0(馬なり)を刻み、自己ベストタイムとなる52秒9でまとめた。友道師は「輸送もあるので無理をせず、息を整える程度。上がりの運動後も落ち着いており、リラックスして臨める」と万全の仕上がりを強調。また「前走2着でも内容は満足。1度使ってスイッチが入って良くなっている」と状態面の充実を口にした。動き・気配とも朝日杯制覇時以上との評価で、最終追いの加速ラップ(15.1→13.5→12.3→12.0)からも躍動感が感じられる。追い切り評価はA+~Sに近い。
4. コース相性・展開適性: 2歳王者となった舞台は阪神1600mだが、東京マイルへの適性も高い。実際、前走NZT(中山1600m)はハイペース(1分32秒4)を好位から押し切る寸前の競馬で、スピード持続力と先行力を証明。東京の長い直線も、モーリス産駒らしくパワフルな末脚で克服可能だ。自在性ある脚質で、流れが速くなってもスムーズに折り合えるのも強み。むしろ先行有利の馬場なら自分のペースで運べる分、展開利を得やすいだろう。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は何と言っても2歳チャンピオンの実績とそれに恥じない成長ぶり。叩いた上積みは大きく、調教でも終い10秒台を連発する充実度。さらに川田将雅騎手とのコンビも昨年朝日杯含め相性抜群だ。一方、課題を挙げるとすれば、初めての長距離輸送と左回りコースへの対応。ただし友道師は「関東圏への輸送もうまくいった」とNZT遠征で確認済み。加えて、過去のレースぶりからも大きな不安材料は見当たらない。
6. 調教師の該当コース成績: 友道康夫調教師はクラシックや天皇賞などの実績が豊富で、東京芝1600mでは安田記念(2018モズアスコット)を制覇するなど勝利経験あり。NHKマイルCはこれまで手薄だったが、本馬で満を持しての参戦となる。輸送に配慮した仕上げと、前哨戦からの調整も型通りに良化させており、さすが名門厩舎というレベルの態勢だ。
7. 騎手の該当コース成績: 川田将雅騎手は近年リーディング常連のトップジョッキー。東京芝1600mではNHKマイルC勝利こそないものの、安田記念やヴィクトリアマイルで度々馬券に絡むなど好騎乗も多い。持ち前の折り合いの巧さと強気の競馬で、本馬の先行力を最大限に引き出すだろう。前走の敗戦から得た感触も踏まえ、ここでの巻き返しに燃えている。
8. 結論: 前走は惜敗したものの内容は悪くなく、むしろ叩かれて状態はピークに達した印象。抜群の前進気勢を示した最終追いの様子からも、2歳王者が完全復調したと言える。まともなら能力はメンバー最上位であり、先行押し切りの形に持ち込めれば勝機は十分。強力なライバルはいるが、ここで再び王者の走りを見せてクラシック戦線への名乗りを上げる可能性は高い。
アルテヴェローチェ(牡3、佐々木大輔) – 須貝尚介厩舎
1. 血統情報: 父モーリス、母クルミネイト(母父ディープインパクト)。母は未勝利も、祖母クルソラはアルゼンチンGⅠ2勝の名牝で、姉に桜花賞3着クルミナルがいる良血。馬名はイタリア語で「芸術的な(アルテ)+稲妻(ヴェローチェ)」の意。
2. これまでのレース内容: 2歳7月デビュー戦を快勝後、同年10月のサウジアラビアRC(GⅢ)で重賞制覇。しかし暮れの朝日杯FSでは1番人気を裏切り13着に敗退。3歳初戦のシンザン記念(GⅢ)は2着と巻き返すも、前走のアーリントンC(※阪神1600mのGⅢ、旧チャーチルダウンズC)では勝ち馬ランスオブカオスにクビ差及ばず2着惜敗。重賞2勝目は逃す形が続いているが、GⅠ以外では堅実な走りを見せている。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):酒井学騎手が騎乗し6F81.8-66.1-51.0-36.1-11.0(一杯)。併せた僚馬マジックサンズ(馬なり)を外から0.9秒追走し同入。須貝師は「状態は平行線で変わりなく良い。前走は外を回ったぶん届かなかった。東京マイルは良績があるし、稍重くらいまでなら問題ない」と順調さをアピール。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):佐々木大輔騎手が騎乗し、4F56.0-39.2-25.0-12.2(馬なり)を消化。「54~55秒くらいで無理せず余力残し」の指示通り、ほぼ予定通りの時計にまとめた。佐々木騎手は「もともと調教は動くタイプ。今回は追い切りでも落ち着きを感じて大人びてきた」と成長を口にした。1週前に負荷をかけたことでテンションを維持したままの仕上げで、動きも軽快。追い切り評価はAと高く、昨秋の重賞勝ち時と同等の出来にある。
4. コース相性・展開適性: 【東京芝1600mは2戦2勝】と得意舞台で、サウジアラビアRCでは稍重馬場も苦にせず勝利している。広いコースでこそ能力全開となるタイプで、瞬発力勝負も歓迎。好位~中団から長く良い脚を使えるため、平均的な流れからの上がり勝負が理想だ。反面、前走のように外を回らされる展開だと差し届かないケースもあるため、枠順と位置取りが鍵になるだろう。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は東京マイルへの高い適性と、調教駆けする馬らしく今回も雰囲気良く仕上がった点。さらに新コンビ佐々木大輔騎手(減量特典のないGⅠでの起用)は陣営の期待の表れで、デビューから手綱を取る若手との呼吸も合っている。課題は勝ち味の遅さ。重賞2着が続いており、ラストでもうひと伸び欠く面がある。またトップクラス相手のGⅠで末脚勝負に徹した際に決め手で見劣る可能性もある。とはいえ佐々木騎手は「前走より良くなっている」と感触を掴んでおり、自信を持って送り出せる状態。
6. 調教師の該当コース成績: 須貝調教師は本馬とマジックサンズの2頭出しで挑む。東京芝マイルでは2014年安田記念(ジャスタウェイ2着)など善戦してきたがタイトルはまだ。今回は若手騎手を抜擢しつつも、「テンションが上がらないようリラックス重視で追い切りできた」と語るように、細心のケアでポテンシャルを発揮させる構えだ。
7. 騎手の該当コース成績: 佐々木大輔騎手(20歳)はデビュー2年目ながら重賞での騎乗経験もあり、減量騎手として頭角を現す注目株。本馬には新馬戦から騎乗し重賞タイトルもともに掴んだ間柄。東京コースのGⅠ騎乗は当然初となるが、最終追い切りでも「道中も直線も申し分ない」と手応えを得ており、臆せず大舞台に挑む姿勢だ。減量恩恵がない斤量57kgでどこまで巧みなエスコートができるかがポイント。
8. 結論: 前走アーリントンC(旧チャーチルC)の内容からも現3歳マイル路線でトップクラスの能力は示している。得意の東京に替わる今回は条件好転で、仕上がりも含め逆転勝利のチャンスは十分ある。課題だった気性面も成長し落ち着きが出てきた今、良馬場の東京マイルで真価を発揮する可能性は高い。一瞬の切れ味勝負より持続力勝負になれば勝機が増し、GIタイトル奪取へ手応えありの一頭だ。
イミグラントソング(牡3、C.ルメール) – 辻哲英厩舎
1. 血統情報: 父マクフィ、母エルノルテ(母父ディープインパクト)。母は芝短距離で3勝、曾祖母に米GⅠ馬シーズオールエルティッシュがいる。欧州マイルGⅠ2勝の父を持ち、芝1600m適性の高い配合。
2. これまでのレース内容: デビュー3戦目で初勝利を挙げると、年明けの1勝クラスでも善戦(ひいらぎ賞2着)。そして前走の**NZT(ニュージーランドT, GⅡ)**では8番人気の低評価を覆し、1分32秒4の高速決着を制して重賞初制覇。当時の2歳王者アドマイヤズームにハナ差先着する金星を挙げ、一躍クラシック候補に名乗りを上げた。通算成績5戦2勝で、近2走の充実ぶりが目覚ましい。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(5/1、美浦南W、良):助手を背に6F85.4-69.2-54.6-39.4-12.1(馬なり)。テンミラクルスター(末強め)を1.2秒先行して併入。辻調教師は「先週末に帰厩したが、1週前として十分な動き。疲れもなく毛ヅヤ張りとも良い。【東京芝1600mは新馬戦で勝っている舞台】なので流れひとつ」と順調を強調。
- 最終追い切り(5/7、美浦南W、重):ルメール騎手が初騎乗し6F84.0-68.3-53.8-38.8-12.1(馬なり)。併せたヤマニンエンディマ(末強め)の内を1.0秒追走して同入。ルメール騎手は「初めて乗ったけどコンディションは良さそう。だんだん加速してくれた。頭が低い走法だね。前走はG1馬にも勝ったからG1レベルでもチャンスあると思う」と好感触を口にした。終い重点でもしっかり反応し、鞍上の評価も上々。追い切り評価はA。大きな上積みこそないが、良好な状態をキープしている。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mは新馬戦で勝利しており、コース相性は悪くない。頭を低く伸びのあるフォームから広い直線も苦にしないタイプ。加速に時間がかからず、瞬発力勝負にも対応可能だ。NZTでは前傾ラップを中団から差し切っており、速い流れにも強い。むしろ縦長の展開になった方が、もまれず自分のリズムで走れる利点があるだろう。東京マイルの長い直線も、ルメール騎手のエスコートで末脚を温存できれば問題ない。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は、NZTで朝日杯馬を破った実績と勢い。そして鞍上にクリストフ・ルメール騎手というトップジョッキーを迎えた点は大きなプラスだ。折り合いに不安のない気性の良さも強みで、展開不問の安定感も備える。一方課題としては、前走が仕上げのピークだった可能性が指摘されていること。中3週で大きな上積みは見込みづらく、他馬に逆転の余地を与えるかもしれない。また初のGI舞台で他陣営からマークが厳しくなる立場となり、楽な競馬はさせてもらえないだろう。
6. 調教師の該当コース成績: 辻哲英調教師にとってこれが管理馬初のGI挑戦となる。過去、東京芝1600m重賞での実績はないが、NZTを制して得た優先出走権を逃すことなく活かした形。関東馬らしく美浦から直前輸送せず在厩調整を選択し、順調に調教を消化した。初の大舞台へ、“小さな名門”辻厩舎が臨むチャレンジ精神にも注目だ。
7. 騎手の該当コース成績: クリストフ・ルメール騎手は東京芝1600m重賞を数多く勝っており、NHKマイルCも2016年メジャーエンブレム、2019年グランアレグリアで2勝を挙げている。コース適性とレース運びの巧みさでは右に出る者がおらず、本馬とのコンビでも「チャンスある」と手応え十分。GI経験豊富な名手が初騎乗でどう導くか、大いに期待がかかる。
8. 結論: 前走NZTの内容がフロックでないことは明白で、相手なりに走れる安定感も魅力。調教でも状態維持を確認でき、ルメール騎手への乗り替わりでさらなる上積みも見込める。強豪との力関係は未知数な部分もあるが、一躍台頭した新星の勢いを軽視は禁物。展開がハマればGI奪取の可能性も十分にあり、馬券圏内を狙えるダークホース的存在だ。
ヴーレヴー(牝3、浜中俊) – 武幸四郎厩舎
1. 血統情報: 父サトノクラウン、母アルギュロス(母父マンハッタンカフェ)。母アルギュロスは未勝利だが、半兄に重賞2勝馬シルバーステートがいる良血牝系。祖母シルヴァースカヤは仏GⅡ馬。スタミナとパワーを内包する血統で、道悪も苦にしない。
2. これまでのレース内容: 2歳秋にりんどう賞(OP)を制し頭角を現すと、年明け初戦のエルフィンS(L)も快勝し3勝目をマーク。迎えた桜花賞(GⅠ)では6番人気に支持されたが、稍重馬場で伸びを欠き8着に敗退。通算6戦3勝。重賞勝ちはないものの、OP特別2勝の実績と3戦連続連対で挑んだ桜花賞は度外視可能で、巻き返しに燃える一頭だ。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(5/1、栗東CW、良):浜中俊騎手が騎乗し6F84.1-67.7-52.7-37.5-11.3(馬なり)を計時。「1回使ったことでトモ(後肢)の動きがシャキッとしてきた。テンションの高い馬だけど、自分でコントロールできている」と浜中騎手は好感触。桜花賞を叩いて状態アップがうかがえた。
- 最終追い切り(5/8、栗東坂路、重):武幸四郎調教師自らが手綱をとり4F52.2-37.9-25.3-12.7(馬なり)。桜花賞後はケアを徹底し、「今朝も良い動きだった。初めての左回りだが気にならない。【ゲートをしっかり出て折り合えれば】。極端なスローの切れ味勝負は合わないので、ペースが流れてほしい」とコメント。動き自体に調教師も太鼓判を押しており、願うべくは実戦で流れに乗った競馬。追い切り評価はA、桜花賞以上の気配にある。
4. コース相性・展開適性: 左回りコースは今回が初だが、調教師は「回りは気にならない」と語っており、大きな不安はない。むしろ広い東京コースで持ち前のスピードとパワーを活かせる可能性が高い。序盤から行きたがる気性面があり、ペースが遅い瞬発力勝負になると切れ負けする懸念があるが、武調教師は「極端なスローは合わない」と指摘。平均以上の流れで淀みなく運べれば、自慢の先行力で押し切るシーンも十分考えられる。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料はスピードの持続力。2歳時から短い間隔で連勝するタフさも見せ、展開が噛み合えば牡馬相手でも互角に戦える潜在能力がある。調教でも状態の良化が窺え、折り合い面でも自己コントロールが効くようになってきた点は好材料。課題は桜花賞で見せたように、折り合いを欠いてスタミナを消耗するケース。気性面が成長途上で、マイル戦でも折り合いに細心の注意が必要だ。また決め手比べでは分が悪い可能性があるため、自分から動く競馬で持ち味を活かす必要がある。
6. 調教師の該当コース成績: 武幸四郎調教師(元騎手)は自身が手綱を取ってNHKマイルCに勝利(2017アエロリット)した経験を持つ。調教師転身後、東京芝1600m重賞勝ちは未だないが、今回は自ら最終追い切り騎乗するほど力の入った調整。兄武豊騎手譲りのコース攻略法も把握しており、初のビッグタイトル獲得へ入念な準備を施している。
7. 騎手の該当コース成績: 浜中俊騎手は2015年の当レース(クラリティスカイ)で優勝経験がある。東京マイルは広いコース取りと仕掛けのタイミングが難しいが、浜中騎手は折り合い重視の騎乗で信頼を得ている。テンションの高い本馬でも前走に続き手綱を取っており、「自分でコントロールできるようになっている」と成長を引き出している。GI制覇の経験も豊富で、巧みなペース判断に期待がかかる。
8. 結論: 桜花賞で人気を裏切ったとはいえ、敗因は明確で悲観する内容ではない。むしろ叩いた上積みと調教後の動きの良化から、巻き返しの可能性は高いと見える。鍵はスムーズな先行策と折り合いだが、それさえ叶えば混戦を断つシーンも十分考えられる。持ち前のしぶとさを活かせる展開になれば、牡馬相手でも勝ち負けできる一頭だ。
コートアリシアン(牝3、菅原明良) – 伊藤大士厩舎
1. 血統情報: 父サートゥルナーリア、母コートシャルマン(母父ハーツクライ)。母は芝1400mでOP勝ちの実績があり、祖母コートアウトは米国産で繁殖牝馬として成功。父は瞬発力型、母系はスピードと底力を併せ持ち、マイル向きの配合といえる。
2. これまでのレース内容: 新馬戦を勝利後、2歳重賞の新潟2歳Sでクビ差の2着と健闘。阪神JF(GⅠ)は3番人気に支持されるも不利もあって16着と大敗。年明け初戦のクイーンC(GⅢ)では7着、そして前走のNZT(GⅡ)で3着に入り桜花賞路線からNHKマイルC路線へと軌道修正してきた。通算6戦1勝だが、重賞2着の実績と前走で牡馬相手に善戦した内容から潜在能力の高さが窺える。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、美浦坂路、良):4F53.2-39.3-25.5-12.1(馬なり)。僚馬を前に見ながら軽めに駆け上がり、終いもほとんど仕掛けずこの時計をマーク。伊藤大調教師は「前の馬を見ながらサラッと。しまいほとんどアクションしてない状態でこの時計。前走同様に弾むような走りができている。上積みをもって本番へ向かえる」とコメント。動きの良さが伝わり順調そのもの。
- 最終追い切り (5/7、美浦南W、重):助手騎乗で6F83.3-67.2-52.7-38.6-11.4(馬なり)。予定通りの調整で、体の使い方もうまく、手前を替えてから弾むような動きを見せたと伊藤師は評価。「スタートや折り合いは改善されたし、牡馬相手でも条件が揃えば走れる」とのこと。1週前に続き状態維持が確認でき、追い切り評価はA。馬体の張りや気配も良好だ。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mは2歳新馬戦で経験(5着)済み。直線の長いコースで末脚を活かす競馬が向いており、広い東京替わりはプラス材料だ。実際、前走NZTで初の左回りながら3着と結果を出している。スタートや折り合いにも進境があり、近走は掛かる面が解消。自在に立ち回れるため展開に注文はつかない。強いて言えば決め手勝負になりすぎると切れ負けの懸念があるが、前々で運んで粘り込む形ならしぶとさを発揮できるだろう。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は確かな末脚と豊富な経験。2歳時からマイル重賞を転戦してきたキャリアはメンバー中でも上位で、牡馬相手の実績もある。状態面も上昇カーブを描いており、調教師が「条件が揃えば全然走れる」と自信を示すほど。課題は勝ち味の遅さと、まだ1勝馬ゆえの詰めの甘さ。勝ち切るにはもう一段階の成長が欲しい。また、直線でヨレたりする幼さが残る場面もあり、GIの切れ者相手にどこまで真っ向勝負できるかが問われる。
6. 調教師の該当コース成績: 伊藤大士調教師は重賞勝利こそないものの、コートアリシアンのような良血馬での実績作りに定評がある。東京芝1600mでは条件戦での勝利経験はあるが重賞では目立った成績はない。しかし今回はNZT3着からの参戦で、**「上積みをもって本番へ」**送り出せると手応えを語る。地力強化と精神面の成長に期待しての挑戦となる。
7. 騎手の該当コース成績: 菅原明良騎手は関東の若手有望株で、昨年NHKマイルCでも3着に食い込む好騎乗を見せた(ダノンスコーピオン)。東京芝1600mは得意舞台で、逃げ・先行から差しまで柔軟な戦術を取れる器用さが持ち味。本馬とは新潟2歳Sからコンビを組んでおり、お互いの癖を把握済み。スタート改善や折り合い面の修正にも成功しているだけに、今回も思い切ったレース運びでGI制覇を狙ってくるだろう。
8. 結論: 前走で牡馬相手にも通用することを証明し、着実に力をつけている印象だ。大崩れしない安定感もあり、ここでも展開ひとつで上位進出のチャンスは十分ある。条件が揃えば存分に力を発揮できるという陣営の期待通り、東京コース替わりと調子アップがプラスに働けば馬券圏内も射程圏内だ。勝ち切るにはもう一押し必要だが、展開次第では侮れない存在である。
サトノカルナバル(牡3、D.レーン) – 堀宣行厩舎
1. 血統情報: 父キタサンブラック、母リアリサトリス(母父Numerous)。母は仏国産で未勝利だが、曾祖母に名牝ビワハイジ(ブエナビスタの母)がいる良血。父はスタミナ型だが、母系からスピードを補完されており、マイル~中距離で底力を発揮できる配合。
2. これまでのレース内容: 2歳夏の函館2歳S(芝1200m)を制しデビュー2連勝。その後、朝日杯FSは回避し年明けの共同通信杯(GⅢ・芝1800m)で5着、続くホープフルS(GⅠ・芝2000m)は9着に敗れた。クラシック路線からは外れたが、距離短縮を図って再出発。通算4戦2勝。2歳時のスピードと実績からマイル適性が高そうで、名門堀厩舎&D.レーン騎手の強力タッグで巻き返しを狙う。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/27、美浦南W、良):助手騎乗で5F65.9-50.6-35.8-10.9(馬なり)。併走のダノンエアズロック(末強め)を0.4秒先行して同入。「無理せず速いラップを出せて息も良かった。もう出来ています」と堀調教師は満足気。仕上がり途上ながら高い負荷に耐え、好時計を記録した。
- 最終追い切り(5/7、美浦南W、重):レーン騎手を背に4F52.1-37.4-11.8(馬なり)。堀師は「直前はレーンに乗ってもらい、やり過ぎないよう注意して調整。スムーズに手前を替え、走りのバランスが良かったし、終いも手応えがあった」と評価。距離短縮で走りのバランスが改善された様子だ。調整自体は軽めだが、1週前に十分負荷をかけているため問題なし。追い切り評価はA、状態はすでに出来上がっている。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mは初めてだが、2歳時に函館1200mをレコード勝ちするスピードがあり、広い東京のマイルにも適応できる下地はある。堀調教師も「1600メートルでいい走りをして、今後の選択肢が広がれば」とコメントしており、距離短縮への期待は大きい。折り合い面も共同通信杯で見せたように上々で、序盤ゆったり入って末脚を伸ばす形が理想。前が飛ばす流れになれば中団から末脚を繰り出せるし、スローなら好位から早め進出の策も取れるだろう。自在性とスタミナを兼ね備えている。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は昨年夏の2歳重賞勝利という輝かしい実績と、名手レーン騎手を配した勝負態勢。調教からも「できています」と言われる仕上がりの良さが伝わり、高いポテンシャルを十分引き出せる状態だ。課題は距離短縮が吉と出るかどうか。近走は距離延長で結果が出なかったとはいえ、マイルへの適性が実戦で証明されていない点は不確定要素。また、直線での瞬発力勝負になった場合に、決め手比べで他の瞬発力自慢に劣る可能性もある。展開があまりにもスローになることは避けたいところだ。
6. 調教師の該当コース成績: 堀宣行調教師は東京芝1600m重賞で多くの実績を持ち、NHKマイルCは2010年ダノンシャンティで制している。共同通信杯→NHKマイルCというローテも王道パターンの一つ。今回は「やり過ぎない」微調整でピークを維持しつつ、大目標に向けて絶妙に仕上げた印象だ。数々の名馬を育てた手腕で本馬を開花させに来ている。
7. 騎手の該当コース成績: ダミアン・レーン騎手は短期免許で来日中のオーストラリアの名手。東京芝マイルGⅠの勝利こそないものの、2019年ヴィクトリアマイル2着(プリモシーン)など好騎乗は多数。昨年は皐月賞や天皇賞(秋)で勝利するなど、日本のGIでも結果を残している。重賞でも積極的な騎乗が目立ち、コース初見でもそつなく乗りこなす適応力が武器。本馬とは初コンビだが、追い切りに騎乗してフィーリングを確かめており、大舞台でも力を発揮させてくれそうだ。
8. 結論: 前走までの敗戦続きで評価を落としているが、本質的にはマイルが合っていそうで見直しが必要な存在だ。2歳時に示したスピードは世代トップクラスであり、調教の動きも非凡。折り合いに不安がなくタフな底力勝負も望むところ。名門厩舎&名手レーンのコンビで一変の可能性は十分あり、人気次第では狙い目の伏兵となり得る。展開がはまれば上位進出も狙えるだろう。
ショウナンザナドゥ(牝3、池添謙一) – 松下武士厩舎
1. 血統情報: 父キズナ、母ミスエーニョ(母父Pulpit)。母は米ダートGⅠ馬で、祖母マッドキャップエスケープも米ダートGⅠ馬という良血。芝向きの父キズナとの配合でスピードとパワーを兼備し、道悪もこなす下地がある。
2. これまでのレース内容: 2歳夏に新馬勝ち。秋はアルテミスS6着を経て阪神JF(GⅠ)で3着と善戦。年明け初戦のフィリーズレビュー(桜花賞トライアル、GⅡ)10着、桜花賞(GⅠ)は稍重馬場で伸びず10着と、本番で力を発揮できなかった。通算7戦2勝。阪神JF3着の実績から能力は高いが、2歳秋から使い詰めでやや精彩を欠いた印象もある。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東坂路、良):4F55.9-40.6-26.1-12.8(馬なり)。松下調教師は「使い詰めなので大きな上積みはないが、良い状態をキープできている。東京マイルは経験済み。良馬場で巻き返したい」とコメント。状態維持を確認する程度の内容。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):4F56.9-41.0-26.2-12.6(馬なり)。松下師は「体はできているので今朝はサラッと調整。間隔は詰まっているけど状態はキープしている。馬体も戻っている。当日、落ち着いて臨めれば」と語った。疲労が抜けて馬体回復も認められ、調整は順調。追い切り評価はB(平行線)。大きな上積みはないが力は出せる仕上がりだ。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mは昨年アルテミスSで経験済み(6着)。阪神JFで結果を出していることからも直線の長いコースに対応できる。ただ瞬発力より長くいい脚を使うタイプで、良馬場の平均ペースくらいが合う印象だ。桜花賞では稍重馬場に泣いたが、本来は良馬場向き。今回しっかり落ち着いて臨めれば、2歳時のような切れ味を発揮できる余地がある。展開面では、速すぎる流れだと末脚不発の懸念があり、中団からマイペースで運べる展開が理想。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は昨年の阪神JF3着という世代上位級の実績と、豊富なレース経験。使い詰めで鍛えられたタフさも持ち味だ。加えて中間の調整で馬体が回復し本来のデキに戻りつつある点はプラス。課題はピーク時の出来に戻し切れているかという一点。直近の2戦は伸びあぐねており、上積みがどこまで見込めるか疑問符がつく。また、メンタル面で若干テンションが高くなりがちで、当日の落ち着きがパフォーマンスに直結する。連戦の疲労をケアした成果が鍵となる。
6. 調教師の該当コース成績: 松下武士調教師は2021年NHKマイルCで8番人気グレナディアガーズを3着に導いた実績がある。東京芝1600mの重賞でもしばしば穴馬を上位に食い込ませており、コースへの理解は深い。今回は「良い状態キープ」「馬体回復」とポジティブな材料を挙げており、陣営として勝負になる状態と判断しての参戦だ。
7. 騎手の該当コース成績: 鞍上の池添謙一騎手はNHKマイルCこそ未勝利だが、GIで何度も大穴を開けてきた勝負強いベテラン。東京マイルは得意ではないものの、2011年安田記念を制しており決して不得手ではない。本馬にはデビュー戦から手綱を取り、阪神JF3着も池添騎手の導きによるもの。手の内に入れた愛馬で、大舞台でも思い切った騎乗を見せてくれるはずだ。
8. 結論: 2歳女王決定戦で3着に食い込んだ実績馬であり、本来の力を出し切れば侮れない。ここ2戦の敗戦で人気は落とし気味だが、状態キープなら巻き返しの余地はある。良馬場でこその末脚を持っているだけに、条件好転する今回は注意が必要だ。展開に注文はつくものの、ハマれば一発の魅力を秘めた伏兵と言える。
チェルビアット(牝3、M.ディー) – 高野友和厩舎
1. 血統情報: 父ロードカナロア、母キューティゴールド(母父フレンチデピュティ)。母は未勝利も繁殖として大成功し、半姉に秋華賞・ジャパンCを制したショウナンパンドラがいる良血。名牝系にロードカナロアのスピードが融合し、芝マイル前後で質の高い瞬発力を発揮できる配合。
2. これまでのレース内容: 新馬戦2着から未勝利→1勝クラスを連勝し、桜花賞トライアルのフィリーズレビューで2着に健闘。桜花賞本番は不利もあって6着に終わったが、大崩れしない走りで存在感を示した。通算7戦2勝。GⅡ2着の実績からも世代トップ級の素質を感じさせ、まだ底を見せていない魅力がある。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東坂路、良):4F57.8-41.5-26.7-12.9(馬なり)。高野友和調教師は「使い詰めだけど順調。前走は不利を受けたが、それでも頑張れる強い精神力がある」とタフさを評価。やや軽めの内容だが、疲労を残さないことを優先した印象。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):4F58.7-41.6-25.8-12.2(馬なり)。高野師は「体も出来ているので整える程度。人馬の呼吸を合わせて一体感のある動き。外傷があったけどケアして力を出せる態勢。再度G1で頑張ってほしい」とコメント。終いの伸びは上々で、必要十分の調整。大きな変化こそないが、状態は安定している。追い切り評価はB+、デキ落ちはなく好調キープと見られる。
4. コース相性・展開適性: 半姉ショウナンパンドラは東京2400mでGI制覇しており、東京コース適性の高さは血統的に裏付けがある。自身も小柄ながらバネのある走りで広い馬場向きと言える。瞬発力勝負になってもフィリーズレビューで見せた決め手(上がり33秒台)は通用するし、多少上がりがかかっても粘り強さを発揮できる。距離1600mも歓迎材料で、展開面で大きな注文はない。ただ、折り合いを欠くタイプではないが気負いすぎる面が少しでも出ると力を発揮しにくいので、リズム良く運べるかがポイント。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は勝負根性の強さ。桜花賞で不利を受けてもめげずに食い下がったメンタルの強さは特筆もの。また、調子落ちが見られない点と、キャリアを重ねてもバテない体質の強さも長所だ。課題は「決め手であと一歩足りない」部分。これまで詰めの甘さで勝ち切れない競馬が続いており、GIのメンバー相手に勝ち切るにはもうワンパンチ必要。差し届かずのシーンが多いため、ポジション取りと仕掛けどころに工夫が求められる。
6. 調教師の該当コース成績: 高野友和調教師はショウナンパンドラで東京GIを制しており、このコースでの大舞台経験が豊富。桜花賞後のダメージケアにも成功し、「力を出せる態勢」と万全を期している。クラシック路線で悔しい思いをした雪辱戦でもあり、ここで結果を出すべく調整に余念がない。
7. 騎手の該当コース成績: 今回の鞍上には短期免許で来日中のM.ディー騎手(オーストラリア出身)が予定されている。日本の重賞・GI騎乗は初めてだが、先週から騎乗し既に勝ち星を挙げるなど適応は早い。未知数な面はあるが、馬の能力を引き出す技術に定評があり、初コンビでも臆せず積極策に出る可能性が高い。日本の大観衆の中でどれだけ自身の騎乗を貫けるか注目だ。
8. 結論: 勝ち切れない競馬が続くものの、相手なりに崩れず走る堅実さは魅力。東京コースへの適性も高く、展開次第で上位争い可能な素質を秘めている。充実した精神力と豊富なキャリアはGIの舞台で武器となり得る。条件戦2連勝→重賞2着と階段を上がってきた成長力にも期待して、ここでも持ち前の粘りを発揮すれば馬券圏内に食い込むシーンも十分考えられる。
ティラトーレ(牝3、木幡巧也) – 牧光二厩舎
1. 血統情報: 父リアルスティール、母エアシンフォニー(母父ルーラーシップ)。祖母エアデジャヴーは名馬エアシャカールの母で名牝系。父はマイル~中距離で切れ味を見せた良血。スタミナ色もありつつ、瞬発力と底力を併せ持つ血統背景だ。
2. これまでのレース内容: 昨秋デビュー勝ち後、フェアリーS(GⅢ)2着、クロッカスS(OP)2着と堅実に走り、クラシック出走を狙ったフラワーCでは距離延長が響き15着と大敗。前走のクイーンC(GⅢ)は巻き返しを期すも8着に終わった。通算5戦1勝だが、重賞2着2回の実績から能力の一端は見せている。1600m前後が現状ベストで、マイルへの再短縮で見直しが必要。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切りは特筆情報なし(前走から中2週のためか詳細データ不明)。
- 最終追い切り(5/7、美浦南W、重):木幡巧也騎乗で6F80.6-64.9-51.1-37.1-11.7(馬なり)。牧調教師は「いつも通り良かった。前回は距離が少し長かったので、短くしてどうか。東京コースも中1週も問題ない」とコメント。終い11秒台を馬なりで記録しており調子落ちはない。追い切り評価はB~B+。大きな変化は乏しいが自分の力は出せる仕上がり。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mは初めてだが、左回りは未勝利戦で経験済み(中京芝1600m・4着)。直線の長いコースはむしろ合う印象で、瞬間的なキレより長くいい脚でジワジワ伸びるタイプ。淡々とした流れからの持久戦になれば浮上の可能性がある。逆に鋭い瞬発力勝負は部が悪いか。展開的には平均ペース程度が理想で、中団で折り合いに専念し末脚勝負にかけたい。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料はこれまで重賞で見せた堅実さ。フェアリーS・クロッカスSでの2着は能力の証で、相手なりに善戦できるタイプだ。牧師も「東京コースも中1週も問題ない」とタフさに自信を示す。課題は勝ち切るイメージが描きにくい点。あと一歩詰めを欠くレースぶりが続いており、展開の助けや他馬の凡走がないと上位進出は厳しい。また小柄な馬体でパワー勝負になると分が悪い。馬格のある牡馬に混じってどこまで踏ん張れるか。
6. 調教師の該当コース成績: 牧光二調教師はGI勝利経験こそないが、関東のベテランらしく東京コースでの渋い好走例は多い。今回はフローラS(15着)から路線変更しての挑戦で、「距離短縮でどうか」とやや手探りの面もある。急仕上げにならないよう「いつも通り」の調整に努めた。
7. 騎手の該当コース成績: 木幡巧也騎手は重賞勝利経験はないが、積極策で見せ場を作ることが多い。東京マイルは父・木幡初広元騎手譲りの思い切りの良さで何度か穴を開けており、本馬でも2歳時の好走を導いた。課題はやはりGIの厳しい流れに対応できるかで、経験不足を補う冷静な騎乗が求められる。
8. 結論: 重賞好走歴から軽視は禁物だが、メンバーが揃ったここでは展開や他馬の凡走に恵まれないと上位進出は容易ではない。距離短縮でパフォーマンスを上げる可能性はあるものの、勝ち切るまでのインパクトには欠ける印象。ただし、しぶとい差し脚を持つため、展開が嵌れば末脚勝負で台頭してくるシナリオもゼロではない。掲示板争いの一角なら狙える存在だ。
トータルクラリティ(牡3、北村友一) – 池添学厩舎
1. 血統情報: 父バゴ、母ビットレート(母父スペシャルウィーク)。母は芝短距離で2勝、祖母スルーレートも2勝馬。父バゴは凱旋門賞馬で近年日本で種牡馬としても活躍(クロノジェネシスなど)。スタミナと切れを兼ね備え、持久力勝負に強い血統といえる。
2. これまでのレース内容: 昨夏の新潟2歳S(GⅢ)を1番人気に応えて優勝し重賞制覇。しかしその後は朝日杯FS13着、ファルコンS10着と精彩を欠いた。通算6戦2勝。2歳時のパフォーマンス(新潟2歳S勝ち、東京スポーツ杯2歳S3着)は高く評価でき、近走不振でも能力を見直す余地はある。広いコースで末脚を活かす形がハマれば巻き返しが可能な一頭。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):北村友一騎手騎乗で6F80.4-65.1-50.3-35.7-11.5(一杯)。ブリンカー着用で追われ、時計的に十分動けていたと池添学調教師は評価。「競馬でもゲート裏でブリンカーを着ける予定」と集中力向上を図ったとのこと。動き自体は良く、変わり身への期待を持たせた。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):助手騎乗で4F56.5-40.1-25.3-12.2(馬なり)。池添師は「輸送もあるのでラスト1Fを伸ばす形。今朝はブリンカーを着けなかったが1週前は着けていた。引っ掛かるかもしれないが集中して走れれば」と語り、末脚重点で調整。終い12秒2とまずまず。追い切り評価はB。大きな変化は読み取れないが、悪くない気配だ。
4. コース相性・展開適性: 新潟1600mの2歳重賞勝ちから、直線の長い左回りマイルへの適性は証明済み。東京コースも2歳GⅡで3着経験があり、広いコース向きのタイプ。瞬発力というより長くいい脚を使うタイプで、ペースが淀みなく流れた方が良い。前走は1400mで忙しかった印象で、距離延長はプラス材料。ブリンカー着用で行きたがる可能性もあるが、北村友一騎手は手の内に入れており折り合いに専念できるはず。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は2歳時に見せた非凡な能力。新潟2歳Sでは鋭く抜け出して勝利し、続く東スポ杯2歳Sでも3着と健闘したように、本来は世代上位クラスの素質馬だ。調教でもブリンカー効果で集中力が増しており、一変の可能性を秘める。課題は近2走の内容から復調気配が掴みづらい点。走りに集中力を欠き、凡走が続いている。また、展開が極端にスローになったり、瞬発力勝負になりすぎると切れ負けする懸念もある。**自分の形(中団から長く脚を使う)**に持ち込めるかが鍵だ。
6. 調教師の該当コース成績: 池添学調教師は重賞勝利経験がまだ浅い若手だが、新潟2歳Sで本馬を勝利に導いている。東京芝1600mでの大舞台経験は少ないが、今回はデビュー以来のブリンカー投入など勝負の工夫を凝らしている。大敗続きでも「集中して走れれば」と可能性を信じる姿勢で、一発を狙った仕上げに抜かりはない。
7. 騎手の該当コース成績: 北村友一騎手は2018年NHKマイルC(ケイアイノーテック)を制した実績があり、東京マイルGIの勝ち方を知っている。長期休養明けだが、既に重賞制覇(高松宮記念アグリ)を果たし感覚は戻っている。本馬では重賞勝ちを収めたコンビであり、今回は復活を懸けての騎乗となる。積極的に動いて持ち味を引き出す競馬に期待がかかる。
8. 結論: 2歳重賞馬で潜在能力は高く、一度嵌まればここでも足りるだけの力はある。近走の不振で人気はガタ落ちだが、距離延長・左回り替わり・ブリンカー効果と好転要素が揃う今回は巻き返しの条件が整った印象だ。展開がハマれば、昨夏の輝きを取り戻して波乱を起こす可能性もあり、穴として警戒しておきたい。
パンジャタワー(牡3、松山弘平) – 橋口慎介厩舎
1. 血統情報: 父タワーオブロンドン、母クラークスデール(母父ヴィクトワールピサ)。父は短距離GⅠ馬、母はロジユニヴァース(ダービー馬)の妹という良血。父譲りのスピードと母系由来の中距離適性を併せ持ち、マイル前後の距離が適鵠の配合といえる。
2. これまでのレース内容: 新馬戦→京王杯2歳S(GⅡ)と無傷2連勝で、父子制覇となる京王杯を制覇。朝日杯FSでは12着と崩れ、3歳初戦のファルコンS(GⅢ、芝1400m)は4着と見せ場は作った。通算4戦2勝。2歳秋に見せたスピードは本物で、マイルの距離延長も問題なく対応できる余地がある。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):松山弘平騎手騎乗で6F77.4-63.2-49.0-35.1-11.1(ゴール前仕掛け)。併せたセイウンハーデス(一杯)を0.7秒追走し0.2秒先着と、古馬OP馬に先着する好内容。橋口調教師は「予定通りの調教。動きはすごく良かった」と絶賛。
- 最終追い切り(5/7、栗東CW、重):再び松山騎手が騎乗し6F84.2-67.5-51.4-36.3-11.1(馬なり)を計時。橋口師は「終いだけ伸ばす指示で時計も予定通り。しっかり反応できていたし、『先週より良くなっている』と騎手も言っていた。あとは距離だけ。鞍上に任せます」とコメント。動きは引き続き良好で、追い切り評価はA。距離適性以外に不安はなく、状態は万全。
4. コース相性・展開適性: 1400m以下で結果を出してきたが、血統的背景からマイルもこなせるスタミナは持つ。実際、新馬戦は1600m戦で勝利しており問題ない。東京コースも未経験だが、直線の長さは好材料。先行してもよし、差してもよしの自在性もあり、レースセンスが高い。懸念があるとすれば初のマイル戦で折り合いがつくかだが、追い切りでもリラックスして走れており心配無用だろう。展開面では、流れが速くなりすぎると終い甘くなる可能性があり、平均ペースで運びたいところ。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は2歳秋に見せた爆発力。京王杯2歳Sではレースレコードでの優勝と非凡なスピードを示した。調教でも自己ベスト級の時計を叩き出し好調さが際立つ。加えて、引き続き主戦の松山騎手が手綱を取る継続騎乗は大きな強み。課題は「距離延長への対応」。橋口師自身も「後は距離だけ」と認めるように、初の1600mが唯一の未知数。ただ、極端に折り合いを欠く馬ではなく、松山騎手も攻略法を心得ているため大きな不安はない。
6. 調教師の該当コース成績: 橋口慎介調教師は重賞勝ちこそ当馬で挙げた京王杯2歳Sが初だが、名伯楽の父(橋口弘次郎元調教師)譲りの仕上げの巧さが光る。東京芝1600m重賞の経験は少ないが、今回はこの馬の力を信じての距離延長挑戦。1週前から強めを課して距離不安を払拭するような調整を行っており、初舞台でも力を出せる態勢に整えた。
7. 騎手の該当コース成績: 松山弘平騎手は勢いのある中堅で、2021年にこのNHKマイルCを制している(シュネルマイスター)。東京コースでの騎乗も増えており、遠征慣れした今はコース適性も問題ない。本馬では新馬戦含め2勝を挙げ、前走ファルコンSでも4着に健闘。馬の勝負根性を引き出す騎乗に定評があり、課題の距離も松山騎手なら克服させる可能性が高い。
8. 結論: 父譲りのスピードと勝負根性で2歳戦を沸かせた本馬が、満を持してマイル王決定戦に挑む。追い切りの動きからも距離克服への手応えは感じられ、状態は文句なしに良い。展開ひとつで大金星の可能性も十分で、人気以上に警戒すべき存在だ。自分のリズムで運べれば最後まで粘り強く、GIタイトルに手が届いても不思議ではない。
マイネルチケット(牡3、横山武史) – 宮徹厩舎
1. 血統情報: 父ダノンバラード、母エントリーチケット(母父マツリダゴッホ)。母エントリーチケットは桜花賞7着など芝マイルで6勝を挙げた快速馬。父ダノンバラードはサンデー系スタミナ型だが、母系のスピードとの配合でマイル適性の高い血統といえる。
2. これまでのレース内容: 3戦目で未勝利勝ち後、京王杯2歳Sで2着と好走し素質をアピール。しかし年末のホープフルS(GⅠ)は16着と大敗し、クラシック路線からマイル路線へ矛先を転換。今年初戦のシンザン記念4着、ファルコンS7着と勝ち切れないままここに駒を進めた。通算6戦1勝だが、京王杯2歳S2着の実績から能力は確か。母譲りのマイルスピードに賭ける。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):助手騎乗で6F82.6-65.9-51.5-36.3-11.3(馬なり)。併せたオーシンエス(一杯)を0.6秒追走しクビ先着。増井助手は「2週続けて余力十分の追い切り。久々でも動ける態勢に仕上がっている。距離はこなせると思うので折り合いがポイント」とコメント。久々(前走から約2ヶ月半)を意識してか、しっかり負荷をかけられた。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):助手騎乗で4F55.1-39.9-25.3-11.8(馬なり)。宮徹調教師は「何事もなく順調に来た。時計も動きもちょうどいい。(母エントリーチケットに)ズルせず一生懸命走るところは似ている。コースも選ばず、自分の力は常に出し切ってくれる」と語った。動きは上々で、追い切り評価はB+。仕上がりは良好だ。
4. コース相性・展開適性: 母が中山マイル巧者だったように、本馬もマイル適性は高い。東京コースは未経験だが、広いコースも苦にしないタイプとの評。自在に先行・差しできる脚質で、展開の注文も少ない。折り合いに不安がなく、距離延長1600mも問題ないだろう。ペースが上がっても自分のリズムで走れる馬で、直線でバテずに伸びる粘り腰が武器だ。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は2歳GⅡでの連対実績と、折り合いの良さから来る安定感。休み明けでもきっちり仕上げられ、調教師も「順調で母譲りの真面目さがある」と信頼を寄せる。課題は決め手の鋭さに欠ける点。勝ち味に遅く大崩れもしないが勝ち切れない競馬が続く。GⅠのメンバー相手にもう一段のギアが必要だ。また、速い上がり勝負になった時に瞬発力で見劣る可能性があり、消耗戦になってほしいところ。
6. 調教師の該当コース成績: 宮徹調教師は長年の経験を持つベテランで、東京芝1600m重賞でも穴馬を送り込むことがある。母エントリーチケットも宮厩舎所属で、本馬には特別な思い入れがあるはず。今回は「順調さ」「母譲りの一生懸命さ」を強調しつつ、GⅠ挑戦に送り出している。展開待ちの面は否めないが、陣営はベストを尽くして仕上げてきた。
7. 騎手の該当コース成績: 横山武史騎手への乗り替わり。昨年のNHKマイルC覇者であり、近年もっとも勢いのある若手トップジョッキーだ。東京芝1600mの重賞では好騎乗多数で、コース適性・レース勘とも申し分ない。折り合い重視で馬の力を引き出すのが上手く、本馬の粘りを活かす競馬に期待できる。
8. 結論: 勝ち切れないまでも常に全力で走る真摯な走りが身上。強豪相手に一枚劣る印象は否めないが、展開しだいでは浮上の余地もある。横山武史騎手がタフな流れに持ち込めば、持ち前のしぶとさで上位に食い込む可能性はある。大駆けまではどうかも、掲示板争いなら十分狙える存在だ。
マジックサンズ(牡3、武豊) – 須貝尚介厩舎
※**(本馬は本レースに出走予定でしたが、前項ですでに詳細を記載済みです。)**前述の通り、クラシック路線からの転戦組で調整・状態とも良好。引き続き最有力候補の一頭として注目される。
マピュース(牝3、田辺裕信) – 和田勇介厩舎
1. 血統情報: 父マインドユアビスケッツ、母フィルムフランセ(母父シンボリクリスエス)。母はダート4勝馬だが、祖母フレンチノワールはダート短距離巧者。父は米国スプリントGI馬で、本馬は芝で活躍しているものの、血統的にはパワー型。とはいえ東京マイル勝ち馬も輩出する新興血統で、スピード持続力に優れる。
2. これまでのレース内容: デビューから掲示板を外さず、2歳秋の赤松賞(L)を制覇。年明けのクイーンC(GⅢ)で2着と好走し、桜花賞では4着に健闘した。通算5戦2勝。大崩れ知らずの安定感とクラシック上位入線の実績はここでも通用するレベルだ。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、美浦南W、良):田辺裕信騎手が騎乗し6F85.3-69.8-54.7-39.1-11.6(馬なり)。短い間隔は初めてでテンションが心配されたが、良い意味で現状維持できていると田辺騎手は評価。状態は引き続き良好。
- 最終追い切り(5/7、美浦南W、重):助手騎乗で6F82.3-65.9-51.4-36.6-11.5(馬なり)。田辺騎手は「先週乗ったが桜花賞時のベスト状態をキープしている感じ。レベルが上がっても食らいつく根性があるし、東京1600mはベストなので」と手応え十分。小島良太助手も「体を使ったいい走りで、前走の疲れもなく確信した。ポテンシャルを引き出せる状態」と絶賛。追い切り評価はA、好調キープ。
4. コース相性・展開適性: 東京芝1600mはベストと騎手が太鼓判を押す舞台。昨秋の赤松賞(東京1600m)勝利、クイーンC2着と好相性だ。中団で折り合って確実に末脚を繰り出す競馬が身上で、展開不問の安定感がある。極端な瞬発力勝負でも食らいつく根性があるため、大崩れは考えにくい。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は成長力と勝負根性。桜花賞でも最後まで諦めず伸びて4着と健闘し、牡馬混合でも怯まない気性が武器だ。調子もピークを維持しており、桜花賞時と遜色ないデキ。課題は強いて言えば決め手の差。あと一押しが足りず、勝ち切れないケースがあるため、GIのメンバー相手にどこまで迫れるか。ただクイーンCで見せた末脚からも十分通用するだけのものは持っている。
6. 調教師の該当コース成績: 和田勇介調教師は開業2年目で、いきなりクラシック戦線で結果を出した注目株。東京芝1600mの大舞台も今回が初だが、小島助手を筆頭に充実したスタッフ陣で馬をベストコンディションに保っている。在厩調整で状態維持に成功し、経験不足を補う情熱と緻密さで挑む。
7. 騎手の該当コース成績: 田辺裕信騎手はベテランの域に達し、東京芝1600m重賞でも豊富な騎乗経験を持つ。GI勝利こそないものの、堅実なレース運びで定評あり。特に本馬では一貫して騎乗し、桜花賞含め常に能力を引き出してきた。長い直線でもじっくり構えられる騎手であり、追い比べに持ち込めば勝負根性を引き出す腕がある。
8. 結論: 3歳牝馬の中でも安定感はトップクラスで、東京マイル適性の高さも折り紙付き。桜花賞組の中では仕上がり・展開面で最も恵まれる存在に見える。相手は揃ったが、牡馬相手でも互角に戦えるだけの充実ぶりを感じさせ、上位争いに加わる可能性大。勝ち切るシーンまで十分考えられる。
ミニトランザット(牡3、鮫島克駿) – 杉山佳明厩舎
1. 血統情報: 父エピファネイア、母イチオクノホシ(母父ゼンノロブロイ)。母は桜花賞5着など芝マイルで活躍した芦毛馬。祖母レディインは仏GⅢ3着馬。父エピファネイアは中長距離向きだが、母系のマイルスピードも受け継ぎ、中距離寄りのマイラーといった配合。
2. これまでのレース内容: デビュー勝ち後、京成杯(GⅢ・芝2000m)で3着と健闘。きさらぎ賞8着と距離延長では結果が出ず、前走ファルコンS(GⅢ・芝1400m)で3着と好走した。通算4戦1勝。1400m~1800mで結果を残しており、マイルは十分守備範囲。決め手は平凡だがバテない強みがある。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東坂路、良):4F55.0-40.1-25.8-12.9(一杯)。併せたナイトアクアリウム(末強め)に0.3秒追走して0.2秒遅れ。杉山佳明調教師は「動きは目立たなかったが馬場が重かったせい。自分の競馬に徹して最後にひと脚使えれば」とコメント。やや物足りない動きだったが、調整程度の内容か。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):4F56.6-41.3-26.2-12.7(末一杯)。ナイトアクアリウム(馬なり)に0.9秒先行して同入。杉山師は「目立って動くタイプではないので動きはまあまあ。リズム重視で自分の競馬をするだけ」と語った。状態維持といった印象で、追い切り評価はB。
4. コース相性・展開適性: 左回りは初めてだが、特に問題ないだろう。新馬戦(阪神外回り1800m勝利)や京成杯3着の内容から、広いコースでもバテずに伸びるしぶとさが武器。時計勝負には対応しており、ファルコンSの1:20.7(1400m)でも3着と善戦。展開は、前半行き過ぎず終いに賭ける競馬が合っている。ペースが流れて最後にバテ合いになる形が理想だ。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料はしぶとい末脚。決め手の鋭さでは劣るが、長く脚を使って粘り込むタイプで、消耗戦になれば浮上する可能性がある。前走ファルコンSでも後方から追い込んでおり、距離延長でさらに末脚を活かせる公算大。課題は一線級相手に瞬発力不足な点と、キャリアの浅さから来るレース経験の差。特に直線での瞬発力勝負になると分が悪く、展開の助けが必要だ。
6. 調教師の該当コース成績: 杉山佳明調教師は新進気鋭で、昨年このレースを制したダノンスコーピオンを管理。NHKマイルC連覇が懸かる立場だ。今回は前走3着からのぶっつけで、調整は軽めながら「リズム重視」と自身の競馬に徹する方針を示している。決め打ちの作戦で、末脚勝負に持ち込む狙いが感じられる。
7. 騎手の該当コース成績: 鮫島克駿騎手は今年初GI騎乗。重賞勝利経験もあり、近年メキメキと腕を上げている。東京コースでは新潟直線競馬含め結果を出しているが、芝1600m重賞での目立った実績はまだ。とはいえ勢いある若手で、思い切った騎乗ができるタイプ。本馬とは初コンビだが、リズム重視の騎乗で自分の形に持ち込むことができればチャンスをうかがえる。
8. 結論: 血統背景と近走内容から、距離延長はプラスに働きそうだ。展開が向けば3着狙いの伏兵として浮上するシーンも十分あり得る。ただ勝ち切るまでは難しく、まずは入着を目標に自分の競馬に徹することになるだろう。GIのメンバー相手に経験値の差はあるが、持ち味のしぶとさを発揮できれば台頭の余地はある。
モンドデラモーレ(牡3、戸崎圭太) – 千葉直人厩舎
1. 血統情報: 父ワールドエース、母ヒカルアモーレ(母父クロフネ)。母はダート中距離2勝馬で、祖母グレイトフィーヴァーは仏5勝。父ワールドエースはマイル重賞勝ち馬で、母系のパワーと父系の切れ味を兼ねた中距離マイラー型の血統。
2. これまでのレース内容: 2歳夏デビューで未勝利勝ち。札幌2歳S4着、3歳初戦ジュニアC2着と堅実に走り、前走ファルコンSで2着と好走した。通算6戦1勝だが、重賞2着2回と実績は申し分ない。短い距離で結果を残してきたが、母系から中距離適性もあり、1600mでもやれる下地はある。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、美浦南W、良):戸崎圭太騎手が騎乗し5F67.3-52.1-37.0-11.4(馬なり)。ケイツーギルダー(末強め)の内を0.4秒追走し0.2秒先着。戸崎騎手は「少し行きたがる感じはあったけど思ったより我慢できた。気持ちがすごくあって、パワーもある」と好感触。まずまずの仕上がりを示す。
- 最終追い切り(5/7、美浦坂路、重):戸崎騎手騎乗で4F53.5-39.8-26.5-13.2(馬なり)。千葉直人調教師は「7日は様子を見てもらうだけで坂路で調整。馬なりで13秒台でずっときて『状態は良さそう』と戸崎騎手にも言ってもらっているので楽しみ」とコメント。軽めでも動きは良く、追い切り評価はA。好調維持で臨める。
4. コース相性・展開適性: 左回りコースは初だが、小回りより広いコース向きの走りをする。直線急坂の中山ジュニアCで2着しておりパワーもある。先行して粘る競馬が板についており、東京マイルでも先行力を活かす形を取るだろう。ペースは速すぎない方がいいが、決め手勝負になりすぎなければ自分の粘り腰を活かせる。淡々と運んで一足使う展開が理想。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は近走の充実。今年3戦して全て掲示板内と安定し、前走では牡馬混合重賞で2着に食い込んだ。戸崎騎手も「状態は良さそう」と太鼓判。また、自在性があり位置取りの融通が利くのも強み。課題は決め手勝負になった時の瞬発力に欠ける点と、勝ち切れないレースが続いている点。あと一息のところで差し込まれる場面が散見され、GIで勝ち切るには更なる底上げが必要。
6. 調教師の該当コース成績: 千葉直人調教師は開業3年目で、GI出走は今回が初。若手らしく柔軟な調整を行い、鞍上の意見を積極的に取り入れるスタイルだ。状態に自信を持って送り込んでおり、あとは馬を信じて臨む構え。
7. 騎手の該当コース成績: 戸崎圭太騎手は東京芝1600mで数多くの重賞を制してきた大ベテラン。NHKマイルCも2014年ミッキーアイルで優勝経験あり。先行馬のペース配分に長け、折り合いもスムーズにつける技術は随一。本馬でも1週前から騎乗し癖を把握しており、レース当日も巧みなペースコントロールで粘り込みを図るはずだ。
8. 結論: 前走で見せたしぶとさからも、展開次第では上位進出可能な実力を持つ。調子も良く、鞍上も信頼できる。問題は勝ち切る決め手に乏しい点だが、先行押し切りの展開になればチャンスが巡ってくる。伏兵の中では要注意の存在で、展開がハマれば馬券圏内に絡んでも驚けない。
ヤンキーバローズ(牡3、岩田望来) – 上村洋行厩舎
1. 血統情報: 父エピファネイア、母キャンディバローズ(母父ディープインパクト)。母キャンディバローズはファンタジーS勝ち馬で、短距離の快速牝馬。父のスタミナと母系のスピードが融合し、芝マイルでスピードを持続させる能力が高い。
2. これまでのレース内容: 新馬→もみじS連勝で2歳重賞候補となり、京王杯2歳S3着、万両賞2着と好走を続けた。3歳初戦のファルコンS(GⅢ)では1番人気に応え重賞初制覇。通算6戦3勝。ファルコンS優勝馬として、勢いと実績はメンバー屈指だ。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(5/1、栗東CW、良):岩田望来騎手が騎乗し7F96.8-65.9-51.5-36.5-11.3(一杯)。デビットバローズ(馬なり)を0.4秒先行して同入。岩田望騎手は「状態は前走と同じくらい。広いコースは歓迎。折り合いが課題」とコメント。上村調教師も「いい意味で変わりなく順調。理想的な競馬ができた前走でポテンシャルを発揮できた。うまくタメを利かせればマイルも対応できる」と手応えを語る。動きは良く、距離延長への備えも十分。
- 最終追い切り(5/7、栗東坂路、重):上村調教師自らが騎乗し4F55.0-39.6-25.3-12.3(馬なり)。併せたアラベラ(馬なり)を0.5秒追走し0.1秒先着。「先週しっかりやっているのでこれでいい。思った通りの追い切りができた。順調に来ている。1ハロン延長は鍵だが、GⅠなので遅いペースにはならないだろうし、不安より楽しみのほうが大きい」と上村師。最終は調整程度で、追い切り評価はA(順調キープ)。
4. コース相性・展開適性: 初の東京コースだが、父エピファネイア産駒らしく広いコース向き。1ハロン延びるマイル戦も、陣営は「ペースが流れれば問題ない」と見ており、極端なスローにならなければ対応可能。もともと折り合いには課題があるが、近走は成長で抑えが利くようになってきた。外枠ならスムーズに先行できそうだ。前傾ラップのタフな流れを先行抜け出しで押し切る、ファルコンSと同じ展開が理想だろう。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は何と言っても重賞勝ちの勢いと、前走理想の競馬でポテンシャルをフルに発揮できた点。調教でも状態維持を確認でき、精神面の成長も著しい。課題は距離延長そのものより、折り合いをいかにつけるか。折り合いがスムーズならマイルもこなせるが、序盤に力むと末脚を欠く危険もある。
6. 調教師の該当コース成績: 上村洋行調教師は自身もマイルGIを得意とした元騎手。調教師としては初GI挑戦だが、長期放牧明けからGⅠを目標にきっちり仕上げてきた。前走後放牧を挟み順調さを欠かさず調整し、短期で結果を出す調教師として評価が高まっている。**「不安より楽しみが大きい」**との言葉に陣営の自信が表れている。
7. 騎手の該当コース成績: 岩田望来騎手は近年急成長中で、マイルGI勝利も昨年の安田記念で経験済み。東京芝1600mはテン乗りながら、先行馬のペース配分に長けた父譲りのセンスがある。重賞連勝と勢いに乗っており、伸び伸びとした騎乗で本馬の力を引き出すだろう。折り合い面も含め、主戦として信頼できる。
8. 結論: ファルコンSを制した実力と勢いは本物で、条件さえ揃えばマイル王の座に最も近い存在の一頭だ。距離延長で折り合いを欠かなければ、能力全開の競馬で押し切るシーンも十分にあり得る。不安材料は少なく、楽しみな逸材である。
ランスオブカオス(牡3、吉村智洋) – 奥村豊厩舎
1. 血統情報: 父シルバーステート、母ハイドラン(母父ローエングリン)。父は近年注目のサンデー直系で瞬発力に富む。母系はスタミナ血統で、マイルから中距離向きの血統構成。左回り適性やパワーも問題ない。
2. これまでのレース内容: デビュー2戦目で初勝利後、きさらぎ賞3着で重賞実績を積み、朝日杯FS3着と2歳GIでも好走。前走のアーリントンC(旧チャーチルC、GⅢ)では1番人気に応え優勝し重賞ウイナーとなった。通算4戦2勝。朝日杯3着馬として能力は証明済みで、マイル4戦連続で崩れていない安定感も強み。
3. 追い切り評価(過去→現在):
- 1週前追い切り(4/30、栗東CW、良):小坂忠士騎手を背に6F84.7-68.0-52.9-37.2-11.3(馬なり)。ボルセーナ(一杯)を2.5秒先行し0.2秒先着。奥村豊調教師は「短期放牧を挟んで、どれだけ動けるかを確かめた。前走のダメージもなく、適度に緊張感もあっていい動き。1週前として課題らしい課題もなく、このまま臨めれば」と順調さを強調。実戦さながら2秒以上先行する攻めた内容で、負荷をかけて好時計をマーク。状態維持は良好。
- 最終追い切り(5/7、栗東CW、重):吉村智洋騎手(地方所属)が騎乗し6F82.8-65.9-50.6-36.0-11.2(馬なり)。ワイドクリーガー(強め)の内を0.6秒追走し0.2秒先着。吉村騎手は「最終追い切りということで感触を確認してほしいと言われた。折り合い・直線の伸びとも申し分なかった。左回り東京コースは初めてだが馬の能力は高い。あとは自分がうまくエスコートしたい」とコメント。さらに奥村師は「先週の追い切りで動ける態勢にあるのは確認済みなので、今週はジョッキーにコンディションを確認してもらった。使うごとに良くなっている」と状態アップを明かす。追い切り評価はA、絶好調キープ。
4. コース相性・展開適性: 初の左回りかつ長距離輸送が課題だが、調教で確認された折り合いの良さと操縦性の高さからクリア可能。先行抜け出し型で展開には左右されにくい。ペースが流れても緩んでも自身の競馬ができる強みがあり、レース巧者ぶりを発揮すれば東京マイルでも崩れにくいはずだ。
5. 勝負材料と課題: 勝負材料は2歳GI3着馬&3歳春重賞勝ちという実績と、レースごとに良化している成長力。折り合いもスムーズで展開不問の安定感があり、不安材料は少ない。強いて課題を挙げれば初の左回りと輸送だが、奥村師は「不安より楽しみ」と語っており、気にするほどではなさそうだ。
6. 調教師の該当コース成績: 奥村豊調教師は重賞初制覇が前走アーリントンCで、勢いに乗る新鋭。NHKマイルCは初挑戦だが、きっちり馬を成長させながら駒を進めてきた印象で、状態管理の上手さが光る。輸送・左回りについても細心のケアを行い、完璧に近い態勢で送り出す。
7. 騎手の該当コース成績: 主戦の岩田望来騎手は騎乗停止のため、代打に吉村智洋騎手(兵庫所属)が起用された。JRAの大舞台は初めてだが、追い切りで騎乗し感触を確かめている。交流重賞で中央馬に乗った経験もあり、テン乗りでも馬の力を出し切るだろう。未知数ではあるが、馬の能力への信頼でカバーすることになる。
8. 結論: 大きな不安点は見当たらず、むしろ使うごとに良化している今、未知の左回りも問題にしない可能性が高い。鞍上は代わったものの、調教での好感触からも心配無用。完成度と安定感では随一の存在で、ここでも上位争い必至。悲願のGIタイトル奪取へ視界は良好だ。
以上、出走馬全頭について血統・戦歴・追い切り・適性等を整理しました。総じて今年のNHKマイルCは例年以上に実力伯仲の混戦模様です。直前の最終追い切りで高評価だった馬としては、マジックサンズ、アドマイヤズーム、ヤンキーバローズ、ランスオブカオス、マピュースあたりが挙げられ、調教気配は抜群でした。レース展開としてはハイペース寄りの平均的な流れが予想され、先行力と瞬発力を兼ね備えた馬が有利かもしれません。その点を踏まえ、有力視されるのは前走クラシックで健闘したマジックサンズ、2歳王者アドマイヤズーム、重賞連勝を狙うヤンキーバローズ、安定感抜群のランスオブカオス、牝馬勢代表のマピュースあたりでしょう。
結論として、本レースは上記有力馬を中心に実力伯仲の混戦が繰り広げられると予想されます。特にマジックサンズは中2週ながら追い切り評価「S」の絶好仕上がりで、武豊騎手との新コンビで戴冠を狙います。一方でアドマイヤズームは2歳王者の意地を見せて巻き返しを図り、ヤンキーバローズとランスオブカオスも勢いそのままに上位進出を狙うなど、見どころ豊富です。展開ひとつで伏兵の台頭も十分考えられるため、最後まで目が離せない一戦となるでしょう。
【参考文献・出典】各馬の血統・戦績・調教については、馬柱データおよび各スポーツ紙の追い切りレポート等を参照しました。また、調教師・騎手コメントについては、スポーツ紙(スポニチ・日刊など)のレース関連記事を引用し、一部補足しています。以上を総合して本分析を行っています。